「春の一時」 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 「う…ん…。」   眠い……。  たぶんこの日差しのせいだろう。  私は目の前に広がる窓を見る。  季節は春。  心地よい日差しが、私に睡魔を招く。  私、宇佐見蓮子はいつものように、図書室で本を読んでいた。  今日はメリーとの待ち合わせの時間までまだ随分とあったので、前々から読んでおきたいと思っていた本を探し、日の当たる、窓辺の机を選んでそれの椅子に腰をかける。  いつもかぶっている帽子を机の隅に置き、本を開いた。  今回は自分の専攻の学科関係の本ではなく、自分の所属する、オカルトサークルでの調べごとだ。  読み出してから、いったいどのくらい時間が経っただろう。  私は眠い目を擦りながら腕の時計に目をやる。  時計の針はあれから一回ほど回っていた。 「あと2時間ね…。」  メリーとの約束は3時、メリーは今日午後に講義があって、その講義が終わりしだい、サークルの活動をしようという話だった。  後一時間…なら、一眠りしてからでも大丈夫ね。  そう思い、私はまた、目を閉じていった。  私が来たときより、陽の位置は高くなっていた。 「……ん、あ!」  ふと、日差しの強さの変化で目を覚ました。時間まで後30分だった。  昨日少し遅くまで起きていたせいか、かなり深い眠りについていた。  あぶないあぶない。  いつもは私が遅れて行ってしまって、メリーを待たせているが、今日ばかりは私が先に行って、メリーを驚かせてみようと思っていたのだ。  待ち合わせの場所はいつもの喫茶店の前。ここから10分とかからない。 「よし。」  私は自分に言い聞かせるように言うと、机の上に置いた帽子をかぶり、広げた本を貸し出し手続きをし、図書室を後にした。  もうそろそろ来る頃かしら。  私は腕時計を見る。2時50分を過ぎたところだ。  なんだかいつもよりもわくわくする。  サークルの活動に対しては、いつもわくわくしていたが、今日はいつもと違う。  メリーが来る。私がメリーに会いに行くのではなく、メリーが会いに来てくれる。とっても新鮮な感じがする。 「あ。」  道の向こうに、一人の少女が見える。彼女は私を確認すると、いつもの彼女と思えないような顔をしてる。ポカンと、口を開けて。  それが少しおかしくて、私はふっと微笑んだ。それは私が、とても嬉しいと思ったからだ。  彼女は少しして、小走りにこちらへ駆けてきた。私の名前を呼びながら。  私も答える。彼女の名前を呼びながら。  嬉しい。 「ずっと親友だよ、メリー…。」  小声で呟くと私もまた、メリーのもとへ駆けていった。 「蓮子? 蓮子? もう…。」  私は肩をおろす。加えてため息も出る。  ここは、私達の在席している大学の図書室だ。南側に面していて、窓からの日差しがとても気持ちいい。  私の目の前で、本に突っ伏して、右手をだらんとだらしなく垂らしながら寝息を立てているのは、同じサークルメンバーの宇佐見蓮子。  蓮子が今日活動をするから、いつものところでって言っていたので、講義が終わって行ってみたら、今日は定休日。 その近くに蓮子の姿が時間を過ぎても現れなかったので、もしかしたらと思ってきてみた、ということだ。  私たちは、ちょっと変わった能力を持っている。そんな大それたものではないのだけれど。 それもあって、私と蓮子はオカルトサークルをやっている。  大学に入ってまもなく知り合って、それからずっと、事あるごとに一緒にいる。  初めのうちは、ただかまってくれる人とか思っていたけれど、逢うたび、一緒にいるたびに、なんとなく、変わっていっていた。  彼女も、同じように能力を持っているから一緒にいるとか、同じサークルだから一緒にいると言うものでもないようだった。  私は、少し恥ずかしいけれど、蓮子とのことは、誰よりも、とっても親しい友人としてみている。大好きなんだ。 「蓮子。」  自然と声が私の口から漏れた。まわりの人にも聞こえない、目の前で寝ている蓮子にも。  でも、私には聞こえていて、自分で言っておいてさっきまで考えていたこともあって赤面してしまった。 「ずっと親友だよ、メリー…。」 「え?」  蓮子がまた、とても気持ちよさそうに寝息を立てる。どうやら寝言らしい。  ふぅと、私は息を吐く。かなり驚いてしまった。  そして、蓮子の顔を見る。  普段見せないほどに、微笑んでいた。 「私だって、ずっと親友よ、蓮子。」  と、私も微笑み返す。  こういった待ち時間も、悪くない。  陽はだんだんと、沈んでいく。けれど、暖かな陽気はまだ、消えないようだった。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- はい!へたれなSSになってしまいました!しかも途中の絵もへたれに……ごめんよ!蓮子!!orz ……しかもメリーの支援では?みたいな?orz 途中表記が変とかはもう流してください(ぁ まぁ、蓮子支援です!キャラクターがつぼにはまりまくりましたよ!! 著者:五十嵐